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最高裁判所第三小法廷 昭和31年(オ)606号 判決 1957年3月19日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由(追加上告理由を含む)について。

本件訴訟は、選挙に関する法規の違法な適用があることを主張して、これを是正し法規を維持するため、上告人が大和村の住民にして選挙民たる資格において提起したいわゆる民衆訴訟であつて、当事者間に具体的な権利義務その他の法律関係についての争があり個人の権利を保護するための訴訟ではないから、かかる訴訟は、法律の規定をまつてはじめて提起しうるものであり、法律の規定のない限り訴訟を提起しうへきものではない。地方公共団体の長の選挙に関する選挙期日の告示については、独立してその取消を求める異議、訴願又は訴訟を許した法律上の規定はなく、ただ公職選挙法は選挙争訟として異議、訴願又は訴訟のみを規定しており、同法二〇二条は、選挙の効力に関する異議申立期間を選挙の日から十四日と定め、それにつづく訴願、訴訟のほか他に争訟の規定をおいていない。それ故、選挙期日の告示を選挙の一連の手続から切り離して、これを独立した争訟の対象とすることは、法律の許容しない趣旨と解すべきである。されば、原審が同趣旨の見解の下に本訴を不適法と判断したことは正当であつて、原判決には所論の違法はない。論旨は、選挙期日の告示を選挙執行の手続から切り離し、別異の性質を有するものとする上告人独自の見解を前提とするものであるが、所論のように解すべき理由はなく、実際上からいつても、所論告示の違法は、選挙争訟の原因となしうるので、これを独立した争訟の対象としないでも、なんらの不都合はないのである。なお、論旨中には違憲を主張する部分もあるけれども、上告人独自の見解を前提とするか、あるいは単なる法令違反の主張に帰し、すべて理由がない。

よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 垂水克己)

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